ノートPC電池の劣化を実測|33ヶ月で76%

ガジェットレビューラボのアイキャッチ画像:ノートPCバッテリーの劣化を33ヶ月実測した結果を解説するブログ記事 ガジェット

ノートPCの電池がどれくらい弱ったかは、Windowsの標準機能で数字が出る。dynabook RZ/MWを2年8ヶ月使った結果は、設計容量48,741mWhに対して満充電容量37,110mWh。設計比76.1%だった。

ただしこの数字、素直に受け取ると外す。33ヶ月分を月ごとに並べたら、12日間で9ポイント落ちた区間と、7ヶ月かけて逆に増えた区間の両方が出てきた。電池はそんな動き方をしない。

そして昨日、80%充電モードを入れた。翌日に測ったら72.6%まで落ちていた。1日で3.5ポイント。これも劣化ではない。

SE歴20年でガジェットの実測記事を書いている筆者が、33ヶ月の推移と、数字が動く仕組みを整理する。

ムラサキ
ムラサキ

2週間で9ポイント落ちたときは電池が壊れたかと思った。並べて見たら、そういう数字ではなかった。

結論から:33ヶ月で76%、ただし直線では減っていない

まず全体像を出す。2024年1月から2026年9月まで、月ごとの満充電容量を設計容量に対する比率にしたのがこれだ。

dynabook RZ/MWの満充電容量33ヶ月の推移グラフ

グラフを見ると3つの区間に分かれる。最初の7ヶ月は緩やかに減り、2024年8月に崖のように落ち、そこから1年以上ほぼ横ばいで推移している。

MEASURED · 2026-09-05


設計容量: 48741 mWh
満充電容量: 35389 mWh
設計比: 72.6 %
測定期間: 33ヶ月

買った月は設計比101.7%だった

2024年1月17日から29日の記録が49,571mWh。設計容量が48,741mWhなので、101.7%になる。100%を超えるのは珍しくない。設計容量は保証値に近く、個体によっては上回る。

そこから2024年7月まで、8ヶ月かけて96.9%まで下がった。月あたり0.6ポイントほど。ここまでは教科書どおりだ。

2024年8月、12日間で9.1ポイント落ちた

問題はここからだ。

2024年8月2日から6日の記録が47,048mWh。次の8月6日から18日の記録が42,621mWh。12日間で4,427mWh、設計比で9.1ポイントが消えている。

前後の月は緩やかなのに、ここだけ崖になっている。リチウムイオン電池が12日で9%劣化することはない。

2025年3月から9月は、むしろ増えている

もう一つおかしい区間がある。

2025年3月が38,821mWh(79.6%)、2025年9月が39,186mWh(80.4%)。7ヶ月かけて0.8ポイント増えた。電池が回復することもない。

この数字は実測値ではなく推定値だ

崖と回復の両方が出るなら、答えは一つしかない。満充電容量は測った値ではなく、電池側のコントローラが出している推定値だ。

充放電のパターンから残量を逆算していて、深い放電をしたタイミングで較正がかかる。較正が入ると推定値が跳ねる。2024年8月の崖は、較正のズレが一気に解消された結果と考えるほうが自然だ。

ただし、ここは断定できない。電池コントローラのログは読んでいない。外から見える数字の動き方からの推測で、「較正で説明がつく」までしか言えない。

2026年は74.1%と78.2%を行き来している

推定値だと分かると、直近の数字の揺れも説明がつく。

時期満充電容量設計比
2026年4月37,129 mWh76.2%
2026年5月37,867 mWh77.7%
2026年6月36,109 mWh74.1%
2026年7月37,667 mWh77.3%
2026年8月38,134 mWh78.2%
2026年9月37,110 mWh76.1%

半年のあいだに4.1ポイントの幅で上下している。1回だけ測って「劣化した」と判断すると、確実に外す。6月に測った人と8月に測った人では、同じPCについて別の結論を出すことになる。

80%充電モードを入れたら、翌日3.5ポイント落ちた

2026年9月4日、dynabookのecoユーティリティで80%充電モードに切り替えた。常時ACで使っているので、満充電維持を避ける狙いだ。

翌9月5日に測った結果がこれだった。

powercfg batteryreportの出力。サイクル数は空欄

充電モードを変えた翌日に、満充電容量が37,110mWhから35,389mWhへ。1日で1,721mWh、3.5ポイント下がっている

これは劣化ではなく、上限を下げた副作用

理屈はこうだ。80%で充電が止まると、電池は本当の満充電に到達しなくなる。到達しない状態が続けば、コントローラは「この電池の満充電はこのあたり」という学習値を下方向へ更新していく。

実際、この記事を書いている時点でAC接続中・充電停止・残量は79.4%で頭打ちになっている。上限は効いている。充電中に実際何Wが流れているかはOS側からは見えないので、そこを追うならインラインのテスターが要る。iPhoneで測ったときは91%と95%のあいだで電圧が切り替わった

つまり80%制限を入れた瞬間から、満充電容量は劣化の指標として使えなくなる。減っていくのは、測る側の基準が動いているからだ。電池の状態とは切り離して読む必要がある。

だから設定前の値を残しておく

これに気づいたのは設定した後だった。幸いWindowsが33ヶ月分の履歴を持っていたので、変更前の推移は取れている。

これから80%制限を試すなら、先に測ってから設定したほうがいい。手順は次に書く。

自分のPCで測る手順

※ 以下のコマンドは筆者が動作確認済み(環境: Windows 11 Home 26200 / dynabook RZ/MW)。実際の挙動は環境によって異なる場合があります。

コマンド一つで済む。管理者権限も要らない。

powercfg /batteryreport

カレントディレクトリに battery-report.html が出力される。ブラウザで開くと、上から順に機器情報・インストールされた電池・直近の使用状況・容量の履歴が並ぶ。Microsoftのコマンド仕様では「システムの有効期間中のバッテリー使用特性のレポート」と説明されている。

出力先を指定したいならこう書く。

powercfg /batteryreport /output C:\temp\battery.html

見るのは Battery capacity history

いちばん価値があるのは「Battery capacity history」の表だ。ここに満充電容量と設計容量の推移が期間ごとに並んでいる。

手元の環境では2024年1月から2026年9月まで、132行が残っていた。Windowsを更新してもこの履歴は消えていない。このPCの InstallDate は2025年1月2日だが、履歴はその1年前から続いている。

1点だけ注意がある。このレポートは実行するたびに作り直される。ファイルとして保存しておかないと、過去の状態は残らない。

サイクル数が出ない機種がある

「Installed batteries」の欄に CYCLE COUNT という項目がある。ここに充放電の回数が出る、はずだった。

このdynabookは空欄だった。WindowsのBATTERY_INFORMATION構造体の仕様には「バッテリーがサイクルカウンターをサポートしていない場合、このメンバーは0です」と書かれている。電池側が回数を報告しなければ、Windowsも出しようがない。

サイクル数が取れないと、劣化を追う手段が満充電容量の推定値しか残らない。ここまで書いてきたとおり、その値は揺れる。

ちなみに使用頻度の低い機器では、劣化より先に自然放電のほうが問題になる。1年10ヶ月使ったMeta Quest 3では、放置で空になるほうが実害だった。

iPhoneでは同じことが起きない

比較のために書いておくと、iPhoneはまったく違う出方をする。

手元のiPhone 17 Proは、充放電225回の時点で最大容量が100%のままだった。9ヶ月半使ってこれだ。詳しくは9ヶ月半使った傷と電池の実測にまとめている。

同じリチウムイオン電池で、片方は33ヶ月で76%、片方は9ヶ月で100%。使い方の差もあるが、それ以上に表示の作られ方が違う。iOSは最大容量を段階的にしか動かさないので、日々の推定値の揺れが表に出てこない。

Apple自身もバッテリーとパフォーマンスの解説で、iOS 14.5以降に「バッテリー状態の予測精度の問題に対処する」更新を入れ、報告システムが最大容量を「再調整する」と書いている。表示されている値が推定であることは、メーカー側も明示している。

Windowsは推定値をそのまま出す。だから揺れも崖も見える。情報量は多いが、読み方を知らないと誤読する。

80%制限は効くのか、まだ分からない

肝心の「80%にすれば長持ちするのか」については、現時点で答えを持っていない。設定したのが2026年9月4日で、丸1日しか経っていない。

しかも上で書いたとおり、満充電容量が劣化の指標として使えなくなっている。効果を測るには別の見方が要る。今のところ考えているのは、しばらく100%充電に戻した状態で再測定して、学習値が戻るかを見る方法だ。

判定できるのは早くて数ヶ月先になる。それまでは週次で記録を残す。

タスクスケジューラで毎週土曜に powercfg を叩き、容量と充電モードをCSVへ追記する形にした。レポートは実行のたびに作り直されるので、残すには自分で書き出すしかない。

よくある質問(FAQ)

Q
満充電容量が前より増えることはありますか?
A

あります。手元のdynabookでは2025年3月に38,821mWhだったものが、2025年9月に39,186mWhへ増えていました。コントローラが出す推定値が上方向に較正された結果と考えられます。電池そのものの回復を意味しないので、数字が増えても喜べる話ではありません。

Q
CYCLE COUNT が空欄なのは故障ですか?
A

故障ではありません。電池側が充放電回数を報告しない機種があり、その場合Windowsのレポートにも出ません。今回のdynabook RZ/MW(電池型番 G71C000MW110)は空欄でした。回数が分からないと、劣化を追う手段は満充電容量の推定値だけになります。

Q
80%充電モードにすると、Windowsの表示はどうなりますか?
A

手元の環境では、AC接続中に充電が停止して残量79%で頭打ちになりました。ただし満充電容量の学習値も下がり始め、設定翌日には37,110mWhから35,389mWhへ3.5ポイント落ちています。バッテリー残量の表示が100%のままになる機種もあるため、実際の挙動は数日使って確かめたほうが確実です。

Q
powercfg のレポートはどれくらい前まで遡れますか?
A

機種と使用状況によります。手元の環境では2024年1月から2026年9月まで、33ヶ月分・132行が残っていました。Windowsの機能更新をまたいでも消えていません。ただしレポートは実行のたびに作り直されるので、古い状態を保存しておきたければHTMLをファイルとして残す必要があります。

Q
買い替えの目安は設計比何%ですか?
A

数字だけで決めないほうがいいです。このPCは2026年の半年で74.1%から78.2%の幅で揺れていて、測った月によって4ポイント違います。目安を決めるなら、数ヶ月分の推移を見て傾向で判断してください。1回の測定値で決めると、たまたま低く出た月に買い替えを検討することになります。

まとめ

dynabook RZ/MWを2年8ヶ月使った実測から、3つ挙げる。

設計比76.1%まで落ちたが、減り方は直線ではない。 2024年8月の12日間で9.1ポイント落ち、2025年3月からの7ヶ月は逆に0.8ポイント増えた。電池はそういう動き方をしない。

満充電容量は推定値だ。 2026年の半年だけで74.1%から78.2%の幅で揺れている。1回測って判断すると外す。数ヶ月分を並べて傾向を見るしかない。

80%充電モードを入れると、この指標自体が使えなくなる。 設定翌日に3.5ポイント下がったが、これは劣化ではなく学習値のずれだ。試すなら設定前に測っておくこと。

肝心の「80%にすれば長持ちするか」は、まだ答えを出せない。週次で記録を続けて、数ヶ月後に判定する。

ムラサキ
ムラサキ

測る道具の癖を知らないまま数字を見ると、無い問題を見つけてしまう。今回いちばんの収穫はそこだった。

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